第1章「変わらない日常」 -予兆-

次の日、いつものように学園へ行く準備をしていると携帯電話が鳴った。
見てみると祐輔からメールだった。
内容は
-本日、学園でなにかあるようなので先に行って情報を集めておく 裕輔-
相変わらずこういうことが好きだなぁ・・・と思いつつ、何があるのだろうと考えてみたら1つしか思いつかなかった。
おそらく昨日の上条さんが転校生としてくるのだろう。
そう思いながら学園へ向かった。
学園につくと校門で裕輔が待っていた。
「おはよう、裕輔。」
「おう、おはようさん。」
挨拶をし教室に向かいながら話をする。
「朝のメールの事って転校生?」
と尋ねてみる。
「・・・知ってたのか。」
「何年の何クラスかまでは知らないけどね。」
やっぱり上条さんの事みたいだ。
「お前のクラスだよ。」
「・・・え?」
一瞬裕輔が何を言ったのかわからなかった。
「だから、転校生。お前のクラスなんだよ。ちなみに女子。」
何かいやな予感がする・・・
でも友達になったんだからできるだけのことはしないと。
「あまり、うれしそうじゃないな。何かあるのか?」
僕がちょっと沈んだことを見抜いたのか裕輔が聞いてくる。
「ちょっとね。気にしなくていいよ。」
とそんなことをいいながらお互いの教室に分かれて入った。
席につきしばらくすると担任の先生が来てホームルームが始まった。
「転校生を紹介する。」
先生のその一言で教室中がざわめく。特に男子が・・・
何事もなければいいのだが。
「入ってきなさい。」
教室のドアを開け女の子が入ってくる。
やっぱり上条さんだった。
黒板に名前を書き自己紹介を始める。
「上条 彩です。両親が海外に出張になったので寮のあるこちらの学校へ転校してきました。これからよろしくお願いします。」
クラスのみんなからは拍手。僕はできるだけ目をあわさないようにしていた。
「席は・・・冬月の隣が空いてるな。教科書は隣の人に見せてもらいなさい。では、ホームルームを続ける。」
こちらに向かって歩いてきた上条さんが僕に気づき笑顔になる。
そして隣に座りまわりに聞こえないように
「昨日はありがと。それと同じクラスになれて嬉しかったよ。いろいろとお世話になるのでよろしくね。」
と言った。
上条さんは満面の笑顔だった。
昨日たまたま助けた女の子が同じ学校で同じクラスになるなんて何か予感めいたものを感じる。
これまでの日常には戻れない。そんな気がした。

第1部 「変わらない日常」 −完−


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