第1章「変わらない日常」 -親友-

ピンポーン
突然、チャイムが鳴る。
誰か来たようなので窓から顔を出して外を見るとそこには祐輔がいた。
「珍しいね。祐輔が朝から家に来るなんて。」
「おう、たまにはな。それに今日はあの日だろ?」
祐輔、フルネームは高嶺 祐輔(たかみね ゆうすけ)で、僕の唯一親友といえる人物だ。
編入したばかりのころは話しかけてくる人が多かったのだけれど、僕自身社交的ではないので聞かれたことにもちゃんと答えることができなかった。
そうしているとだんだんと話しかけてくる人が減ってきたのだが、それでも祐輔だけは話しかけてきたのだ。
それから一緒に昼食をとったり、放課後遊んだりするようになった。
それがきっかけでクラスメイトとも多少は話すことができるようになった。
祐輔がいなかったら僕はクラスで孤立してしまっていたと思う。
今年はクラスが離れてしまったのだがそれでも、休み時間にちょくちょく来てくれる。
本当に感謝してもしたりないくらいだ。
それと祐輔が言ったあの日というのは僕の両親の命日のことだ。
去年の今日、交通事故で亡くなった。
引っ越してきてすぐのことだった。
僕もその事故に巻き込まれたのだが僕だけが奇跡的に助かった。
今でも多少、後遺症があるがそれでも日常生活に支障はないくらいまで回復している。
僕の身元は母の親友であり、学園長でもある天沢 彩香(あまさわ あやか)さんが引き受けてくれることになった。
もっとも一緒には住んでいないのだけれど。
「あがって待ってて。」
まだ起きたばかりなので準備にはまだ時間がかかる。
その間、外で待たせるのは気が引けるので自分の部屋から玄関のロックを外した。
「了解。リビングにいるぞ。」
その返事を聞き僕は着替え始めた。


閉じる inserted by FC2 system