第1章「変わらない日常」 -支えてくれる人たち-

その後は授業に集中した。
休み時間のたび祐輔が来て話をした・・・いや来てくれたのだろう。
そのおかげで暗い考えはなくなっていた。心の中で祐輔に感謝した。
言葉にしても
「なんのことだ?」
と言ってはぐらかすに決まってる。祐輔はそういうやつだ。
昼食は2人で学食へ。いつもは弁当を持参するのだが、さすがに今日は作ってる余裕はなかった。
食べ終わった後は世間話をして教室に戻り午後の授業を消化した。
放課後になり、廊下を歩いていると
「静くん。」
と後ろから呼ぶ声が聞こえた。
この学園で僕のことをそう呼ぶ人物は一人しかいない。
「彩香さ・・・学園長、何か御用でしょうか?」
学園だということを思い出し咄嗟に言い直す。
その人物というのが僕の身元引受人であり、この学園の学園長でもある天沢彩香さんだ。
「えっと、達也と美月の所へは行って来たの?」
達也というのは僕の父親で美月は母親だ。
「はい、朝のうちに。午後からはバイトもあるので。」
「もう一年になるんだね・・・。私も後で行かせてもらうわね。」
「両親も喜ぶと思います。」
「あ、呼び止めてごめんね。じゃあアルバイトがんばってね。無理しちゃだめよ。あと困ったことがあればすぐ言うように。
美月の代わりにはならないかもしれないけどね。」
と彩香さんが微笑む。
「そんなことないですよ。十分に助けてもらってます。」
と言い、礼をして彩香さんと別れバイト先へ向かった。


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