第1章「変わらない日常」 -出会い-

閉店間際になって見慣れない女の子が入ってくる。
なぜか酷く疲れているようだった。
「まだやってますか?」
と女の子が尋ねてくる。
ラストオーダーの時間は過ぎているのだがこの状態で帰すことが僕には出来なかった。
「はい、大丈夫ですよ。」
と席に案内し注文を聞いてカウンターへ。
「すみません沙希さん、ホットココアとナポリタンお願いできますか?」
「静くん、ラストオーダーの時間は・・・」
と言いかけて客席の女の子に気付く。
「うん、わかった。すぐ用意するから。」
事情がわかったのか笑顔で答えてくれた。
「相変わらず優しいわね、静は。」
と後ろから真衣さんの声。
「そんなことないですよ。」
「そんなことあるわよ。ただそういうことすることが自然になっちゃってるから自分で気付かないだけよ。」
「う〜ん。よくわからないですね・・・」
とそんなこと言ってるうちにオーダーが出来上がったので運ぶ。
「おまたせしました。ホットココアとナポリタンです。」
とテーブルに置く。
「ごゆっくりどうぞ。」
とお辞儀をしてカウンターに戻ろうとすると、
「あの、ラストオーダーの時間過ぎてたんですよね?」
女の子が時計と営業時間の表を見て言う。
「どうぞお気になさらず。」
そう言ってカウンターに戻りフロア以外の閉店業務を進めた。
倉庫の在庫を調べ、フロアに戻るとさっきの女の子と沙希さん、真衣さんが話し込んでいた。
真衣さんが僕に気付き手招きをする。
「どうしたんですか?」
と尋ねると一つの紙を渡された。
「ここに行きたいみたいなんだけど確か静の家の近くよね?」
たしかにそこに載っていた住所はおそらく僕の家の近くの星法学園の学生寮だった。
「ここって確か学生寮だったとおもいますが。」
「あ、うん。寮であってるよ。」
と女の子。
結構遅い時間なので、一人で行かせる心配なので送っていこうと思い沙希さんに今日はもう上がらせてもらおう。
そう思い声をかけた。
「えっと、沙希さん・・・」
「あ、うん。わかった。後は私たちに任せてその子よろしくねw」
言わなくても沙希さんはわかってくれたみたいだ。真衣さんもうなずいている。
「着替えてくる間、お願いします。」
女の子だけ事情が読み込めず?マークを浮かべているようだった。


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