第1章「変わらない日常」 -帰り道-

ウェイター服から制服に着替え荷物を持ちフロアに戻り、女の子に声をかける。
「じゃあ、行きましょうか。」
「えっと・・・行くって?」
彼女の方はまだ状況を理解していないみたいだった。
沙希さんか真衣さんが説明してくれると思っていたのだが甘かったようだ。
「こんな時間なので送っていくんですよ。夜道の一人歩きは危険ですから。」
すこし間が空いて彼女が慌て出す。
状況が読み込めたみたいだ。
「あの、その、ち、地図書いていただければ十分ですから。」
と彼女は戸惑っていると
「そこは静に甘えといたほうがいいんじゃないかな?」
「そんね、また迷うと大変だしね。」
と沙希さん、真衣さんが後押し。
「じゃあ、お願いします。」
彼女が了承したの『ユーフォリア』をでる。
「沙希さん、真衣さんお疲れ様です。」
「お世話になりました。」
と閉店準備をしている2人に声を掛けて帰路についた。
途中、会話はなかった。
もともと人と話すことが苦手なため、自分から声を掛けられるはずもなく、女のこの方もただただ自分の後についてくるだけだった。
やがて目的地の学生寮の前に着き僕は彼女についたことを告げる。
「ここですよ。」
「え、ありがとう。」
彼女がお礼を言う。
「僕はこれで。」
といい自宅のほうに歩き始めようとしたとき
「あの、その制服って星法学園のだよね?」
「え?あ、はいそうですよ。」
急に声を掛けられ戸惑うも返事をした。
「私も明日から通うんだけど・・・その、よかったら友達になってくれないかな?」
不安なのだろう。転校したことのある経験があるからそれがよくわかる。
できれば力になってあげたいと思う。が、今朝見た夢がフラッシュバックする。
友達くらいならいいよね?、優衣(ゆい)・・・
「僕なんかでよければかまいませんが・・・」
「ありがとう。えっと静くんって呼んでいいかな?」
「ええ、かまいませんよ。」
彼女が僕の名前を知っていたのが驚きだった。
おそらく沙希さんと真衣さんがそう呼んでいたのを覚えていたのだろう。
「私は、神代 彩。よろしくね。」
と手を差し出される。
「こちらこそ。」
と握手。
「今日はほんとにありがと。じゃあ、おやすみ。」
と満面の笑顔で中に入っていく。
最初あまり喋らなかったのでおとなしい感じがしていたのだがどうやら違ったようだ。
僕はそれを見送り帰路についた。


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